japanese


第1回 「手ぐすねを引く」
KILLER 「最近言葉が乱れ過ぎている」といわれます。
どう乱れているのか?
じゃあ、どんな日本語が美しいのか?
或る女性アナウンサーが
食事レポート(彼女は「食レポ」といっていた)をしている時
普通女性だから「おいしい!」というところ
「うまい!」と男言葉でいった方が
「視聴者に自分の気持ちが伝わるような気がするときがある」
と、いっていた。
なんだか分かるような気がする。
で、一冊の本に出会った。

小学館辞典編集部編「美しい日本語の辞典」
その中の架空の人物「JITEN」さんと話をすすめたいと思います。
件の辞典をアトランダムに開いてーーー
「手ぐすねを引く」から
JITEN JITENです。今後ともよろしくお願いします。
充分に準備をして機会を待つ。という意味です。
もともとは、薬練(くすね)を弓の弦に塗ることをいいます。
KILLER 薬練ってなんですか?
JITEN 「くすね」とは、松脂を油で煮て練り混ぜた、
弓の玄を強くするためのものです。
これを塗ると弓返りを防ぎ速く射ることができます。
手にくすねをとることは、弓を放つ準備をするということです。
ここから予め用意して待ち構える、という意味が生じたんです。
KILLER 「手ぐすねを引く」というのは
近頃では悪い印象しか無いんです。
騙すために、いろいろ策をねって準備をする、みたいな。
手ぐすねを引いている人はだいたいが悪党面、みたいな印象です。
JITEN 例えばよく、手につばをつけて
両手をすりあわせるようなことをするでしょう。
KILLER スポーツなどをしている時
気合いを入れて、よくやりますね。
JITEN その行為も、手ぐすねを引くといいます。
浄瑠璃の女殺油地獄に
「そりゃそりゃ来たぞと三人が、手ぐすね引きたる顔色ーーー」
という台詞があります。
KILLER 手ぐすねを引く場面というのはけっこう身近にあるんですね。
テニスでいえば「アプローチ」を打って前へ出るのは
手ぐすねを引いている状態ですね。
じゃあ「手」つながりで
「手塩(にかける)」をお願いします。
JITEN 自分で世話をする。手にかけて養育する。という意味です。
多くは「手塩にかける」のカタチで用いられます。
KILLER 意味はよく理解してるんですが
なぜ「塩」なんですか?
JITEN もともとは、好みに応じて適当に用いるように
めいめいの食膳にそなえた少量の塩、
あるいは食膳の不浄を払うものとして備えられた
少量の塩のことをいったんです。
この塩を入れた皿を「手塩皿」または「手塩」といいます。
KILLER 禽獣を殺していた台所とか食膳は
不浄ものという意識があったんですね
そこから「男子厨房に入らず」という言葉が生まれてくる。
全く違う意味でとらえていたんですが。
JITEN 泉鏡花の婦系図に
「母さんが手塩に掛けて、妙齢にするまでにはーーー」
という台詞が出てきます。
KILLER

KILLERも一人だけ手塩に掛けました。
次は塩つながりで
「敵に塩を送る」をお願いします。
これは上杉謙信の逸話からきてるんですか?

JITEN そうです。
意味合いとしては、自分と対立して争う者に情けをかけて
その相手の利益になるようなことをあえてする。
KILLER じゃあ、もともとは
戦国時代何回も闘った上杉謙信が宿敵武田信玄に塩を送り
海の無い領国甲斐を塩不足から救った、という
故事からきてるんですか?
JITEN そうです。
兄弟でも殺し合う戦国時代には考えられないことですね。
KILLER いまNHKの大河ドラマでやってますが
上杉謙信という人は「義」の人だったんですね。
またテニスの話になりますが
テニスにはセルフジャッジというルールがあります。
草テニスではなかなか審判がつかないので
自分たちでジャッジします。
この時のルールは一つ
「判断が難しかったり、分からない場合は
 相手が有利なようにジャッジする」
これも「敵に塩を送る」考え方ですが
「塩を送る」どころか「砂糖を奪って」いく人を見かけます。
なかなか難しいものです。
JITEN 闘いが激しいほどできることではありませんね。
KILLER では、また次回よろしくお願いします。
  →「美しい日本語」は、「美しい日本語の辞典」を参考に
 KILLERが勝手に構成しています。
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